アルペンルートの無軌条電車
去る11月30日限りで立山黒部アルペンルートの無軌条電車(トロリーバス、以下 トロバス)が廃止となりました。トロバスの運転区間は扇沢~黒部ダム間6.1km、1964(昭和39)年8月1日から営業運転を行っています。最後まで在籍した300形(301~315)は1993(平成5)年にデビューしていて、その年の5月12日に行われた報道公開に私も参加しました。
扇沢駅。真ん中に止まっているのはアルピコ交通のバスで、赤矢印の所にトロバスが走っているのが見えています。
トロバスの乗り場に停車している300形。後ろに見えているのが在来の100形か200形です。
バスは出入り口のある方が公式側になるのでしょう。中ドアが外吊り式なのは100形以来の伝統です。
公式側の後ろから。屋根に上るためのステップがあります。これは撮影用に広場の真ん中に移動したもので、少しの距離なら架線のないところでも内蔵のバッテリーで走れます。
車内は前向きのクロスシート。
運転席。メーターが電車っぽいし、ブレーキも空制なので、右端に圧力計があります。
運転席の右側は普通のバスとほぼ同じ。
足下。電動だからクラッチペダルはありません。
床のモーター点検蓋を開けたところ。東芝製の三相誘導モーターで、形式SEA-335、出力120kWです。
機器配置図。
この玉っころは車体に溜まった静電気を除去するためのアースで、ドアが開くのに連動して地面に触れるようになっています。
車体後部にはVVVFインバータ装置が収まっています。
点検扉は尾灯部分まで開きます。
トロリーポールの取付け部。
先端部は逆光でシルエットにしか写りません。この時代、日本ではトロリーポールを作っているメーカーがなく、アメリカからの輸入ものだそうです。
記録を辿ってみると、最初の3両(301~303)は1993年5月18日なので、写真撮影時にはまだ竣工していないことになります。続いて304~306が5月25日に竣工。以後、1994年4月、1995年4月、1996年4月に3両ずつ増備され、在来の100形10両、200形5両を置き換えました。製造所は電気関係を担当する東芝が主契約者で、車体は大阪車輌工業、走行部分は三菱ふそうの3社合作となります。
ついでに在来車も撮っておきました。これはクロスシートの100形。200形は見た目が同じでロングシートです。
後ろも前面と同じような顔つきです。
ここは辛うじて停車場外になるかな。車内がロングシートのように見えるので200形でしょう。
この時撮影した写真は私鉄車両編成表'94年版の表4にも使いました。
最後に、トロバスの廃止で使えなくなるネタをひとつ。トロバスを運行しているのは関西電力なので、電気も自前で安くすむんだろう、というのは素人考え。配電事業は縄張りがきっちり決まっているので、地元の中部電力から電気を買っていたそうです。
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電気バスに変わるんですか! ついに1回も乗れなかった、哀号。
電気バスについて・・・電気自動車に乗っているものとして一言。
登りはみるみるバッテリー残量が減りドキドキしますが、
降りで逆に回生できニタニタしそうですね。
投稿: シグ鉄 | 2018年12月 6日 (木) 16時04分
シグ鉄さま、
トロバスは確実性を重視して発電ブレーキでしたが、電気バスなら回生ブレーキで発生した電気を自車のバッテリーに蓄電できます。力行は電流値のリミッターをつけないと、どんどん電気食ってしまいますね。
投稿: モハメイドペーパー | 2018年12月 6日 (木) 19時48分
トロバスのポール先端は溝つきシューが付いた円板が水平方向に回転して、架線との偏移に対応しています。香港のトラムも同じ構造になっていますね。
投稿: Cedar | 2018年12月 6日 (木) 19時48分
Cedarさま、
東京のトロバスのポールは、1本にバネが4本付いていました。それに比べるとかなりスリムだし、長さも少し短いような気もします。
投稿: モハメイドペーパー | 2018年12月 6日 (木) 22時23分
導入当時の詳細なレポート、興味深い内容です。
ハンドルに三菱マークがあるので、てっきり製造者は三菱電機かと思いましたが3社合作だったのですね。
遂に一度も乗らず仕舞いでしたが、VVVFの力行音、制動音を聞いてみたかったなぁ。
投稿: OER3001 | 2018年12月 6日 (木) 23時21分
OER3001さま、
戦後、東芝がトロリーバス用の小型モーターをベースにして、鉄道車両の直角カルダン方式を開発しました。電機品は日立、三菱、東洋なども参入しましたが、最終的に東芝だけになったようです。
投稿: モハメイドペーパー | 2018年12月 7日 (金) 10時33分