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2016年9月 7日 (水)

鉄道強要講座(パンタグラフについて考える)

 だいぶ日も短くなって、季節は学びの秋。今回はパンタグラフについて考えてみます。

Pc260740電車には絶対不可欠なパンタグラフ。その語源は「菱形」という意味なので、パンタグラフ型集電装置というのが正しい表現ですが、鉄道用語ではパンタグラフで通用しています。
 で、このパンタグラフ、電車では特別な事情がない限り台車の真上、つまり、シューの位置ががボギーセンターの真上になるように取り付けられています。菱形のパンタは左右対称ですから、横から見てパンタ台の中心はボギーセンターと一致しています。この写真ではドアの右のラインがほぼボギーセンターで、パンタのシューもその真上にあることがわかります。

Pb078264しかし、世の中には必ず例外があります。これはご存知、阪急6000系で、パンタはだいぶ前寄りにせり出しています。クーラーの位置が優先され、パンタは余ったスペースに追いやられた形です。どうにも不安定な感じですが、このくらいで架線から外れるようなことはありません。冷房車が当たり前の現代では、敢えてパンタはボギーセンターの真上に拘る必要はないのでしょう。

P8061007ボギーセンターとの位置関係はひとまずよしとして、最近の主流になったシングルアーム式パンタ(以下、SAパンタ)は、よく見るとなかなか悩ましい問題を抱えています。まず第一に、これをパングラフの呼んでいのだろうか。どう見たって菱形ではありません。でも、コンクリート枕木の前例もあることなので、今回はこの問題についてはこれ以上追求しません。

Pc092629SAパンタの特徴は取付けスペースが小さくなること。しかし、そのままでは従来のパンタ台に取り付けられません。西武鉄道で実例を見てみましょう。写真は左が菱形パンタから換装した9000系、右が最初からSAパンタの20000系です。9000系では左右に脚を延ばして、従来のパンタ台に合わせています。

Pb262087SAパンタを横から見たところ(西武鉄道20000系)。下枠の回転中心がほぼ碍子の真ん中にあるので、シューはどちらかに寄った位置になります。

Pc220630これは最初からSAパンタを採用した小田急3000形。ボギーセンターとシューの位置を合わせているので、碍子の位置はボギーセンターから外れています。

Pb262089従来のパンタ台に取付ける場合は、フレームを前後方向に延長します。これはシューが碍子間の中央に来るように寸法を調節しています(西武鉄道10000系)。

P4130833菱形パンタから取換えた小田急2000形。シューとボギーセンターの位置は一致しています。

Pc080385東急8000系も同じ。

Pc220643こちらも菱形から取換えた京王8000系。ちょっと見にくいですが、下枠の回転中心が碍子間の真ん中にあるので、シューはほんの僅か車体中央寄りになります。この方がフレームの延長分が多少短くてすむ、ということを優先したのでしょうか。
 ずれたといってもたかだか数10cmくらい。乗っている分にはどうってことはありませんが、模型を作る場合には思わぬ落とし穴になりそうです。

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コメント

振り子電車の集電装置と架線についての考察も期待しています。

ものすごく基本的なことをお聞きします。
シングルアームの場合、くの字の向きは方向によって変わるんでしたっけ?
ポール電車のイメージだと変わるような気がしますが、お写真の西部を見る限り上下同じ向きの様な・・・

ぬか屋さま、
振り子電車は実際に見ているのが地元のE351系だけなんで、あまり突っ込めません。ただ、JR東海、JR西日本のように架線の張り方で対応できるなら、台車に支持台を直結したり、ワイヤーで引っ張るような仕掛けは必要なさそうです。

シグ鉄さま、
くの字は進行方向にかかわりなく一定です。路面電車のZパンタと同じですね。空力的には←くの方が高速での浮上がりが少ないそうです。

おやおや、強要講座新シリーズですか、楽しい内容をありがとうございます。
ワンアームのパンタグラフと言うのも確かに可笑しい。
今や汽車という言葉は消えたけど、新幹線以外は全部電車。モノレールも気動車も。靴の時代になっているのに下駄箱とか。
これらも可笑しいでですよね。

OER3001さま、
まぁ、突っ込み所はいろいろありますが、架線に触ってしっかり電気が取れればよしとしましょう。

南海型のような大型の凸電でセンターパンタだと、カーブでかなり偏りそうな気もしますが、実物のカーブは急と言っても100Rくらいですから、大丈夫なんでしょうね。

赤影さま、
路面電車でも真ん中と端っこがゴチャ混ぜの所もありますから、それよりカーブが緩い一般鉄道なら、特に問題はないのでしょう。

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