鉄道強要講座(窓の大きさを考える)
鉄、非鉄を問わず、電車の窓は大きい方がいいに決まっています(この場合の大きいは、天地寸法を指します)。とはいえ、今様のビルみたいに側面すべてガラス張りなんていうのは無理。いろいろ工作上の都合もあるだろうし、どのくらいの寸法が適当なのか、について考えてみます。
これはモハ30形改造のクモハ11形100番代。国鉄初の半鋼製車ですが、窓高さは800mmで、木造車の寸法そのままです。
モハ31形からは下方に70mm拡大した870mmとなり、この数値が103系までの標準寸法として受継がれます。見た目のバランスもよく、私鉄も概ねこれに習い、天地寸法は850~900mmくらいが多いようです。
*クモハ11とクモハ41の写真は、「我が心の飯田線」の旧型国電画像編から拝借しました。ありがとうございます。
大きな窓の代表といったらこれでしょう。形式に引っ掛けたわけではないけど、窓は縦横とも1000mmの正方形です。戦前製の230形は1080mmで、鉄道線車両としては恐らく最大寸法だと思われます。しかし、最近の京急は、天地寸法に関してはかなり控えめです。
対照的なのは阪急で、伝統的に下降窓を採用していることから、天地寸法は小さめ。2000系から5000系までは800mmです。でも、モハ30ほど小さいという感じはしません。何故かというと
1.回りにアルミの縁取りがあるので、その分だけ大きく見える。
2.車体裾に丸みがあるので、腰高感が緩和されている。
裏を返せば、アルミの縁取りがなく、裾がストレートだったら、見られたもんじゃない、ということです。そんな姿は想像したくないですが。
2200系から上方に50mm拡大されています。屋根を塗分けてくれたおかげで、幕板が少し狭くなっているのがわかります。前面も窓上辺と方向幕との間隔が狭くなっていますね。
8000・8300系からはさらに50mm拡大の900mmになりました。この編成は前2両が8000系、3両目からは7000系なのです。その違いは…、いわれてみればそんな気もする、というくらいかな。
大きい窓は京急の専売特許ではありません。東京地下鉄も伝統的に窓は大きいのです。これは、立っている客が駅名標を確認できるように配慮したものとされています。銀座線の1500形以降は窓上辺が扉と同じ高さになっていて、図面では1000mm、最近のA-train仕様は1009mmになっています。
しかし、実際には荷物棚のストッパーで10cm以上塞がれているし、そのおかげで車内から窓も開けにくくなっています。昔の地下鉄車両は(丸ノ内線の300形あたりまで)乗車時間が短いことから、荷物棚が戸袋窓部分だけでした。今は運転区感も長くなったので荷物棚を省略するわけにもいかず、こういう矛盾が生じています。
車内から見たところ。段差の付いている位置が窓の上辺です。
同様の例は西武鉄道30000系でも見られます。A-train仕様なので天地寸法はメトロ車と同じ。これは初期タイプなのでまぁまぁですが。
最終増備グループではすべての荷物棚を優先席と同じ高さにしたので、塞がれる部分が増えています。はっきりいってガラスの無駄です。
だからといって、これは少し極端な例。監獄電車といわれた6000系で、前面窓のしわ寄せが側面に来てしまいました。天地寸法は確認できませんが、恐らく800mm以下でしょう。
何故こうなったかというと、カーテンきせを荷物棚の下に置いたからなのです。
普通はカーテンきせが半分くらい、荷物棚に隠れます。写真は小田急2000形。
これは相鉄11000系で、天地寸法は940mm。当然、プロトタイプのJR東日本E233系や、京急1000形(ステンレス車体)も同寸です。荷物棚の位置や、窓の開閉なんかを考えると、このくらいに落ち着くのではないだろうか。
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外の景色がない地下鉄の窓が大きいのは面白いですね。
伊豆急100が大きいイメージなんですが、縦はどのくらいだったのでしょうか。
投稿: シグ鉄 | 2016年4月22日 (金) 11時57分
伊豆急は左右が1300mmとワイドなんで、天地は950mm前後でしょう。開閉式で1300mmを越える窓はなかったと思います。
投稿: モハメイドペーパー | 2016年4月22日 (金) 14時11分
やはり京急の230は窓が広くて車内が明るくって、軽快そのものでしたね。好きな電車でした。
投稿: ぼっちぼち | 2016年4月22日 (金) 20時39分
車両の設計はつり革、網棚の高さ等床面が基準になっています。
従って窓が大きくなれば網棚の高さとの関係で窓の上部が潰される事が起こります。
近頃のカーテンの無い車両はカーテンキセの分100~150mm位は大きく出来ますね。
投稿: ぬか屋 | 2016年4月22日 (金) 20時44分
講座、毎回たいへん勉強になります
ところで阪急8200はどのくらいなのでしょう、結構大きいですよね
気になって調べてみたのですが、本やネットでは窓拡大と書かれてるだけで寸法は書かれてないので・・・ご存知なら教えてください
投稿: 青春M | 2016年4月22日 (金) 22時09分
京急の窓は高さが災いして、意外と開口寸法が小さいのです。今は冷房車だから問題ありませんが。
荷物棚とカーテンきせの位置関係、設計者の頭を悩ますところなんでしょうね。西武だったら20000系あたりが一番矛盾のない大きさだと思います。
阪急8200系の窓寸法(天地)は1005mmだそうです。オール立ち席を考慮したものですが、今となってはそれが仇になっているような気もします。
投稿: モハメイドペーパー | 2016年4月22日 (金) 23時57分