鉄道強要講座(電車の前面を考える-5)
今回は非常口付きについて考えてみます。そもそも非常口の定義ですが、車両の前後方向への脱出口なので、車両間を通り抜ける機能は必要としません。実は私がずっと係わってきた私鉄車両編成表という本でも、この区別にはだいぶ悩まされ、「一般的な貫通式の形態でも、幌の取付などができないものは、非常口付きに含める」としていました。その紛らわしいのがこれ。京急1500形です。中央の扉はスライドして横に開くので、どう頑張っても貫通幌は取付けられません。もちろん、車内も通路にできるような仕切りはありません。この考えに従えば、前面に大きな手摺りが付いた小田急の旧型なんかも、非常口付きということになります。
前面が傾斜していても、強引に幌を取り付ける例もありますが、これは完全に非常口です。
非常口付きの元祖といったらこれでしょう。電車の前面は左右対称、という常識を破った画期的なデザインです。
非常用扉を窓なしとしたのには、ちゃんと理由があります。扉の裏が階段になっていて、えいやっと線路に飛び降りなくてもいいという優れものです。
しかし、車内からの見通しは最悪です。登場した時は未来的デザインとして絶賛された6000系ですが、乗ってみるとあまりいいところはありません。
窓なしの非常口は京都市営地下鉄10系でも採用されています。どういう風に開くのかは聞き漏らしました。
非常口の位置は端に寄せるタイプ(便宜的にタイプⅠ)と、
真ん中寄りにして、左端に小窓ができるタイプ(便宜的にタイプⅡ)に大別できます。どちらも非常口の幅は車体幅の1/3くらいです。
窓回りを黒く塗り、非常口が目立たないようにした東急1000系。9000系や2000系も同様です。
京王1000系は左側の窓柱を黒く塗り、湘南マスクのように見せています。
大阪市営地下鉄20系はタイプⅠですが、かなり好き嫌いが分かれるデザインです。スマホフェイスはこれが元祖かも。
京阪6000系は非常口が車体幅の半分弱を占めています。
東武鉄道9000系は、前面が2面折妻という変わり種。扉上の空間がなんとも間延びして、いまひとつ垢抜けません。
東京メトロ16000系の1次車は非常口が中央にありました。
これでは運転席が狭苦しいと運転士から文句が出て、2次からは左に寄せられました。どちらがよいかは各社で試行錯誤が続けられています。
最後に非常口が開いたところをご覧下さい。西武鉄道6000系はちょっと前にせり出してから、横にスライドします。
小田急60000形。地下鉄乗入れがウリなので、流線型でも非常口を付けないといけません。デザイナーが一番頭を捻ったところでしょう。
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コメント
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京急1500は貫通だと思っていました! また間違ったことを書いちまったようです。
話は違いますが、前面仕切りやドアの窓が高い位置の車両が登場した時、まだ子供だったので外が見えなくなりました。
ガキはジャマだからチョロチョロすな、そう言われた様な気がしました。
投稿: シグ鉄 | 2016年3月10日 (木) 12時01分
地下鉄に乗入れるようになってから、いろいろとややこしくなっています。
最近の電車は運転室に積み込むものが増えたし、そうでなくても重くて破損しやすいガラスは、なるべく使いたくないのが技術屋さんの本音のようです。
投稿: モハメイドペーパー | 2016年3月10日 (木) 14時55分
興味深い調査結果をありがとうございます。何事も突っ込むと奥が深いですね。
投稿: ぼっちぼち | 2016年3月12日 (土) 11時21分
どうでもいいようなことでも、数をまとめて並べると、多少はそれらしく勿体が付きます。奥が深いというか、ドロ沼ですね。
投稿: モハメイドペーパー | 2016年3月12日 (土) 15時52分